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「管理職の打診を受けたけれど、正直なりたくない」
「これ以上、責任だけ増えるのは割に合わない気がする」
「自分は管理職になりたくなかったのになってしまった」
管理職への昇進は、かつては素直に喜べる話でした。しかし、いまは少し事情が違います。打診を受けた瞬間、うれしさよりも先に負担の重さが頭に浮かぶ。そんな人のほうが、多いのではないでしょうか?
ただ、その「なりたくない」をそのまま断る理由にしてよいかどうかは、一度立ち止まって考えた方が良いかもしれません。気持ちの出どころによって、取るべき行動が変わってくるからです。
この記事では、管理職の打診に迷ったときに整理しておきたい4つの判断軸をまとめました。断ることを勧める記事でも、引き受けることを勧める記事でもありません。自分で決めるための材料を並べます。
「管理職になりたくない」と感じる人は、珍しくない
日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が2023年4月に実施した「管理職の実態に関するアンケート調査」では、一般社員1,116名のうち77.3%が「管理職になりたくない」と回答しました。理由の1位は「自分は管理職に向いていないから」で、全体の46.6%にのぼります。
この数字を見て、「だから断っていい」というわけではありません。しかしだからと言って、「みんな我慢しているのだから自分もやるべき」と受け取る必要もありません。ここから読み取れるのは、管理職を避けたい気持ちがごく一般的なものであり、意欲の欠如として扱われる筋合いはない、という事実です。
注目したいのは、理由の1位が待遇でも業務量でもなく「向いていない」という自己評価だった点にあります。向き不向きは、実際にやってみる前の段階では推測でしかありません。多くの人が、確かめる前に結論を出している可能性があります。
その「管理職になりたくない」は、どこから来ているのか
ひとことで「管理職になりたくない」と言っても、中身は人によって違います。おおまかに4つに分けてみると、自分がどれに当てはまるのかが見えてきます。
1. 負荷:時間と体力が足りない
いまの業務量ですでに手一杯で、マネジメント業務が上乗せされる未来が想像できない。このタイプの人は、管理職という役割そのものが嫌なのではなく、二重の負担に耐えられないと感じています。
リクルートマネジメントソリューションズが発表した「管理職のあり方に関する実態調査」(管理職188名・一般社員166名)でも、管理職を続けたくない最大の理由として業務負荷が挙げられました。この懸念は的外れではありません。
確かめるべきは「プレイヤー業務がどれだけ減るのか」です。減る見込みがないのであれば、断る理由として筋が通ります。
2. 関係:人と向き合うことに疲れている
評価面談、指導、トラブルの仲裁。人に関わる仕事が増えると考えると気が重くなる。すでに部下や後輩との関係で消耗している人ほど、この感覚は強くなりがちです。
ここで切り分けたいのは、下記の2点の違いです。
- 人と関わること全般が苦手なのか
- いまの職場の人間関係に疲れているのか
後者であれば、環境が変わると感じ方も変わってきます。
3. 割に合わなさ:責任と報酬が釣り合わない
残業代がつかなくなる一方で、役職手当は思ったほど多くない。責任の総量に対して見返りが小さいと感じる。この不満は感情論ではなく、計算で検証できる種類のものです。
昇進後の年収、労働時間の見込み、残業代の扱いを実際に並べてみてください。数字にしたうえで納得できないなら、それは正当な判断材料になります。
あわせて読みたい管理職になってもメリットはない?メリットを感じない理由や本当にメリットがないのか確かめる方法残業代を差し引くと実際にどうなるのか、計算の手順はこちら。4. 適性:自分には向いていないと感じる
先ほどの調査で1位だった理由です。ただ、この感覚はもっとも慎重に扱いたいものでもあります。
多くの場合、「向いていない」の中身は「うまくやれる自信がない」という不安です。経験のない役割に自信が持てないのは当然のことで、適性の有無とは別の話になります。
過去にマネジメントに近い経験があるなら、そのときの実感を思い出してみてください。推測と事実の区別がつきやすくなります。
あわせて読みたい「管理職に向いていない」と感じる人へ|適性の問題と環境の問題を切り分ける「向いていない」と感じる理由と、組織側の要因を整理しています。管理職を断る前に整理したい4つの判断軸
気持ちの出どころが見えたら、次は判断の番です。以下の4つを順番に考えてみてください。
軸1:断りたいのは「管理職」か、「この会社の管理職」か
同じ管理職でも、権限の大きさ、部下の人数、プレイヤー業務の残り方は会社によってまったく違います。いまの会社の管理職像が、管理職という仕事のすべてではありません。
- 管理職の役割そのものが嫌なのか
- この環境で管理職になるのが嫌なのか
そのどちらなのかで、次の一手は変わってきます。後者であれば、断るより環境を変えるほうが本質的な解決に近いでしょう。
軸2:引き受けた場合に増えるものを、具体化できているか
「大変になりそう」は、まだ判断材料になっていません。何がどれだけ増えるのかを、打診してきた上司から聞き出してください。
管理職の業務内容について確認したいのは下記の項目です。
- 部下の人数
- 会議の本数と時間
- 評価業務の頻度
- 承認業務の量
- プレイヤー業務の削減幅
上司が答えられない項目があるなら、会社側もその役割を設計できていないというサインになります。
軸3:断ったあとに何が起きるかを見積もれているか
打診を断ること自体は、あなたの権利です。一方で、その後の評価や配置に影響が出る可能性も現実として存在します。両方を踏まえたうえで決めたいところです。
調べておきたいのは、断った前例が社内にあるか、その人がいまどうしているか、昇給や配置がどう変わったかという点になります。前例がない会社では、影響が読みにくくなります。読めないリスクを引き受けるかどうかも、判断の一部です。
軸4:「保留して条件を交渉する」という選択肢を検討したか
打診への回答は、受けるか断るかの二択に見えがちです。実際には、条件を確かめてから返事をするという道もあります。
「プレイヤー業務をこれだけ減らしていただけるなら、お引き受けしたいです」「半年後にもう一度相談させてください」。こうした返し方であれば、誠実さを保ったまま自分の条件を提示できます。即答を避けること自体は、失礼にはあたりません。
それでも「管理職になりたくない」と決めたときの伝え方
順番は「感謝→理由→代替案」
はじめに、打診への感謝を伝えましょう。次に理由を、会社への批判ではなく自分の状況として説明してください。最後に、管理職以外の形でどう貢献したいかを添えると、話が前向きに着地します。
例文は次のようなイメージです。
「評価いただきありがとうございます。いまの担当業務で成果を出しきりたい気持ちが強く、現時点でお引き受けするのは難しいと考えています。後輩の育成には引き続き関わりたいので、その形で貢献させてください。」
避けたほうがよい伝え方
曖昧に濁す、事実でない体調不良を理由にする、他人を引き合いに出す。いずれも後々の関係に響きます。
理由は一つに絞り、短く伝えるほうが相手に届きます。説明が長くなるほど、かえって迷いがあるように受け取られてしまいます。
あわせて読みたい管理職は断れる?断るメリット・デメリットと伝え方の手順打診を断るときの5つの手順を詳しくまとめています。管理職をやるべきか…自分だけで決めきれないときの相談先
期限が近いのに判断がつかないときは、いったん外に出してみてください。第三者に話すと、自分が引っかかっているものが何か、ヒントが見えてくるかもしれません。
社内であれば、直属の上司のほかに人事や産業医という選択肢があります。産業医面談は体調の相談だけでなく、働き方の相談にも使えます。社外では、各都道府県の労働局が設置する総合労働相談コーナーが、無料で相談を受けつけています。
オンライン心理カウンセリングなどを利用するのも一つです。例えば、「メザニン」は365日いつでも気軽にオンラインで有資格の心理カウンセラーに相談できるサービスです。
また、キャリアそのものを見直したい場合は、転職エージェントに現状を話してみるのも一つの方法です。例えば30・40代管理職・専門職のグローバルキャリアを拓く転職エージェント【Samurai Job】
では、他社の管理職ポジションがどういう条件で募集されているのかを知ることができます。転職するかどうかは、話を聞いてから決めても遅くありません。
まとめ
「管理職になりたくない」という気持ちは、7割を超える人が抱えているごく一般的な感覚です。大切なのは、その気持ちを押し殺すことでも、そのまま断る理由にすることでもありません。負荷、関係、割に合わなさ、適性のどれから来ているのかを切り分けるところから始まります。
そのうえで、断りたいのは管理職という役割なのかこの会社の管理職なのか、引き受けたときに何がどれだけ増えるのか、断ったあとに何が起きるのか、条件を交渉する余地はないのか。この4つを並べてみると、自分の答えが見えやすくなるはずです。
打診への返事には期限があります。ただ、その期限内でできることは、受けるか断るかを決めることだけではありません。まずは自分の「なりたくない」がどこから来ているのかを、紙に書き出すところから始めてみてください。

