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「部下と話が噫み合わない」
「上と現場の間で、どちらにもいい顔ができない」
管理職の人間関係の悩みは、部下との関係として語られがちです。ただ実際には、悩みの出どころは一方向ではありません。下・上・横の3方向から同時に来るうえ、それを相談できる相手が社内にいない。この構造が、管理職の人間関係を独特に苦しいものにしています。
この記事では、悩みを方向別に切り分けたうえで、それぞれに効く打ち手を整理しました。相手を変える方法ではなく、関わり方の設計を変える話です。
多くの管理職が人間関係の悩みを抱えている
職場における人間関係は、誰もが直面する大きな悩みの一つです。それは現場の社員だけでなく、チームをまとめる管理職も同じです。
パソナセーフティネットが実施した「管理職の孤独に関する実態調査」(全国の課長・部長クラス503名)では、64.8%の管理職が「孤独を感じる」と回答しました。
孤独の内容として挙げられたのは、
- 部下やメンバーとの価値観・仕事への熱量のズレ:34.2%
- 経営層と現場の板挟み:33.2%
- 判断や責任を一人で抱える:29.8%で
という結果でした。
この3つは、それぞれ別の方向を向いています。
部下との距離、上司や経営層との距離、そして誰にも相談できない環境。
人間関係の悩みと一括りにすると打ち手を間違えてしまうため、自身の悩みがどこから来ているのかをまず知ることも大切です。
管理職の人間関係の悩みは3方向から来ている
「部下」との価値観が合わない
仕事への熱量、指摘の受け取り方、成長に対する期待値……。
どれも部下と価値観の合わなさを感じながら日々進みがちです。本人に悪気がないぶん、扱いにくい種類の問題ともいえます。
ここで理解しておかなければならないのは、そもそも管理職と部下では価値観を合わせるのは難しい、ということです。合わせようとするほど、相手の反応に一喜一憂することになります。
とくに近年は、世代による働き方の前提が大きく変わりました。長時間働くことを評価しない、指示の背景を知りたがる、キャリアを会社に預けない。どれも合理的な態度であって、熱意の欠如ではありません。ここを「最近の若手は」で片づけると、打ち手が止まってしまいます。
「経営層」と現場の板挟みになる
上からは成果を求められ、下からは負荷の軽減を期待される。どちらの言い分にも理はあるので、板挟みは解消しません。
この構造でしんどくなるのは、両方の要求を自分の中で頑張って調整しようとしたときです。調整役を一人で引き受けると、どちらからも不満を向けられる位置に立ち続けることになります。
あわせて読みたい管理職のストレスの原因と対策|統計で見る5つの要因と減らし方板挟みを含む、管理職のストレスの原因と対策はこちら。「同僚の管理職」に相談しづらい
同じ立場の人間が社内にいるのに、話せない。評価や予算で競合関係にあることが多く、弱音がそのまま自分の評価につながりかねないからです。
結果として、いちばん状況を理解できる相手が、いちばん相談しにくい相手になるということも少なくないでしょう。
管理職の人間関係を解消する方法
部下とは、価値観ではなく仕事の合意をつくる
先述したように、部下と管理職ではそもそも目線が異なります。そのため、そもそも「同じ熱量でやろう」「同じ価値観を持ってもらおう」と求め過ぎないことも大事です。
感情で分かり合おうとするのではなく、「何をどこまでやるか」の合意を具体的に作るほうが解決に近づきます。期限、品質、報告のタイミング。ここが揃っていれば、価値観が違っても仕事は回ります。
もちろん、信頼関係の構築は、あって困るものではありません。同じ熱量でできた方が良いのはたしかです。しかし、それを前提条件にすると、関係づくりに失敗した瞬間に仕事まで止まります。順番を逆にしてみてください。
あわせて読みたい部下同士のトラブルに管理職がすべきことは?対処法と予防策部下同士がぶつかったときの対処手順はこちら。上には、決定と理由を分けて下ろす
板挟みが苦しくなるのは、上の決定を自分の言葉に翻訳して伝えているときです。翻訳した瞬間、その決定はあなたの責任になります。
「会社としてこう決まった。理由はこう説明されている。自分はこの部分に懸念を持っている」。決定・理由・自分の見解を分けて伝えると、あなたが全部を背負う構図から外れます。部下も、誰に何を言えばいいのかが分かりやすくなります。
横は、利害が重ならない相手を探す
社内の同僚が難しいなら、少し外に出た範囲で探すのが現実的です。他部署で評価ラインが違う管理職、社外の勉強会、前職の同僚。
条件は一つで、あなたの評価に関わらない人であることです。利害が重ならなければ、話の内容は同じでも安全性がまったく変わります。
社内で探す場合、ひとつの手が管理職向けの研修です。研修の場で出た話は業務評価とは切り離されているぶん、多少は話しやすくなります。
それがもしハードルを感じるなら、まずは業界団体のセミナーや、オンラインの管理職コミュニティに参加してみるのもよいでしょう。同じ悩みを持つ人がいると知るだけでも、抱えている重さは変わります。
人間関係の問題は「相談相手がいない」こと
3方向の悩みそのものより、深刻なのは相談先の不在です。判断は求められるのに、判断を一緒に検討してくれる相手がいない。調査で「判断や責任を一人で抱える」が3割近くに上ったのは、この状態を指しています。
社内では、上司に相談すると評価の材料になり、部下に相談すると不安を与える。人事は立場上、中立でいられないこともあります。制度としての相談先はあっても、実際には使いにくいという声は少なくありません。
こういうときこそ、社外の相談先が機能します。厚生労働省が運営する「こころの耳」には、働く人向けの電話・SNS・メール相談窓口があり、無料で利用できます。職場の人間関係についての相談も対象です。
もう少し継続的に話したい場合は、カウンセリングという選択肢もあります。国内最大級のオンラインカウンセリングサービス【Kimochi】
のように、オンラインで予約して話せるサービスも増えました。まずは無料の窓口から試して、必要に応じて検討するので十分です。
大事なのは手段ではなく、頭の外に出す相手を一人でも確保しておくことです。一人で抱えている限り、同じ思考が回り続けます。
何を話せばいいか分からないときは
相談先を見つけても、いざとなると何から話すか迷う方がいます。まとめてから話そうとすると、いつまでも話せません。
順番はこれで十分です。いま起きている事実、それに対して自分が困っていること、試したがうまくいかなかったこと。この3点だけメモしておけば、あとは相手が引き出してくれるでしょう。
解決策を求めていないなら、そう伝えてかまいません。「アドバイスではなく、状況を整理したい」と最初に言っておくと、話がずれにくくなります。
あわせて読みたい管理職がつらいのは量のせいではない?4つに分けて考える方法弱音を出す先がないときの向き合い方も扱っています。管理職の人間関係の対策における注意点
人間関係で消耗しているとき、自分で何とかしようと思って行動を起こすこともあるでしょう。しかし、次のような行動は状況を悪くしやすいので注意してください。
- 全員が納得する着地を探し続ける
- 嫌われないことを判断基準にする
- 合わない部下を「いつか分かってくれる」と放置する
- 部下に自分の思いをぶつけて説得しようとする
- 相談を「弱さを見せること」だと考える
とくに最後の一つが厄介です。相談は状況を整理する作業であって、能力の申告ではありません。また、自分の熱量をただ部下にぶつけるだけでは、より溝が生まれて逆効果になるリスクもあります。
まとめ
管理職の人間関係の悩みは、下・上・横の3方向から同時に来ます。それぞれ性質が違うので、まとめて「コミュニケーションの問題」として扱うと解決しません。
管理職の皆さまは、責任感がとても強く「自分でなんとかしよう」「自分が頑張ればなんとかなるはずだ」という思いもあるかもしれません。しかし、管理職の役割は自分の思っている以上に非常に難易度の高いものです。とくに人間関係の悩みは難しく、自分の力だけでは解決できない可能性もあります。うまく第三者の力も借りながら解決につなげていきましょう。

