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管理職の仕事、できないわけではない。ただ、やりたくない。
この感覚を口に出しにくいのは、意欲の問題として扱われると「責任感がない」と受け取られかねないからでしょう。まず確かめたいのは、「それが本当に自分だけの問題なのか」という点でしょう。
この記事では、管理職をやりたくないと考える人がどれくらいいるのかを公的な調査と国際比較で確認し、そのうえで、やりたくないまま会社の中で何を目指せるのかまでを整理しました。
管理職をやりたくない人は、実際どれくらいいるのか
感覚ではなく数字で見てみましょう。
リクルートマネジメントソリューションズの管理職のあり方に関する実態調査(2026年2月24日発表/一般社員166名)では、管理職に「なりたい」「どちらかといえばなりたい」と答えた人は18.1%でした。これに対し、「なりたくない」「どちらかといえばなりたくない」の合計は66.9%、「どちらともいえない」が15.1%です。
つまり、3人に2人が消極的という比率になります。
企業側もこの状況を把握しています。同社の昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査(2024年、企業207社)では、28.5%の企業が「管理職になりたくないという人が多い」ことを現在の課題として挙げました。人事の側から見ても、珍しい反応ではないということです。
一方で、実際に就いた人の意向は別に出ています。前述の管理職のあり方に関する実態調査では、現役の管理職188名のうち「続けたい」「どちらかといえば続けたい」と答えた人が約6割でした。なりたくないと思う人が3分の2、なってみたら続けたい人が6割。この2つは矛盾していません。就く前の不安と、就いた後の実感は別物ということです。
管理職をやりたくないと思うのは、おかしいことなのか
国際比較を見ると、日本では多数派だとはっきり分かります。
パーソル総合研究所のグローバル就業実態・成長意識調査(2022年)では、「現在の会社で管理職になりたい」と答えた人の割合は18か国・地域の平均が58.6%だったのに対し、日本は19.8%で最下位でした。最も高いインドは90.5%です。
差が40ポイント近くあるとき、原因を個人の意欲に求めるのは無理があります。役割そのものの中身を見たほうが説明がつきます。
実際、管理職の負荷は数字に出ています。パーソル総合研究所の中間管理職の就業負担に関する定量調査(2019年3月、中間管理職2,000人)では、働き方改革が進んでいる企業群で中間管理職自身の業務量が増えたとする回答が62.1%、組織全体の業務量増加が69.0%でした。
労働時間でも差があります。厚生労働省が労働政策審議会に提出した管理監督者の労働時間データでは、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった人の割合は、管理的職業従事者が4.1%、全職種平均が1.5%でした。
勤務時間外の連絡も同様です。マイナビの「つながらない権利」をめぐる個人の本音と企業の実態調査(2025年12月、正社員1,446名)によると、勤務時間外に業務連絡がくることがある人の割合は部長職90.3%、課長職89.8%に対し、非管理職は55.5%でした。
やりたくないと感じるのは、負荷が実際に増えている役割を正しく見ているからとも言えます。おかしいかどうかで言えば、全くおかしいことではありません。
あわせて読みたい「管理職になりたくない」と感じたら|断る前に整理したい4つの判断軸打診を受けて迷っている段階なら、こちらで判断軸を整理しています。管理職をやりたくないのは、責任感がないからではない
「自分は責任から逃げているのではないか」という問いには、データで答えられる部分があります。
前述の管理職のあり方に関する実態調査では、管理職の継続意向が、本人の性格ではなく環境によって大きく変わることが示されています。組織からの支援を感じている管理職(POSが高い層)の継続意向は65.2%だったのに対し、支援を感じていない層は41.6%でした。
孤独感でも同じ傾向が出ています。孤独感が低い層の継続意向は70.2%、高い層は40.6%です。差はいずれも20ポイント以上あります。
つまり、同じ人でも、支援があるかどうかで管理職の継続意向の意欲は20ポイント以上動くということです。意欲を個人の資質として測ることには無理があります。やりたくないという反応は、責任感の欠如ではなく、支援のない環境で責任だけを引き受けることへの妥当な警戒と考えるほうが自然です。
もうひとつ押さえておきたいのが、責任と権限の釣り合いです。厚生労働省の労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のためにでは、管理監督者に当たるかどうかの判断要素として、経営者と一体的な立場にある重要な職務内容と責任・権限、労働時間に対する裁量、一般労働者と比べて相応の待遇の3点が挙げられています。人員も予算も動かせないのに結果だけを問われる状態は、この要件を満たしていません。引き受けたくないと感じて当然の設計です。
それでも自分を責める状態が続く場合は、社外の第三者に整理してもらう方法もあります。国内最大級のオンラインカウンセリングサービス【Kimochi】
のようなオンラインのカウンセリングは、結論を出す場ではなく、何に引っかかっているのかを言葉にする場として使えます。
管理職をやりたくない人が、会社の中で目指せるもの
ここが本題です。管理職を目指さない場合、社内で何を目指せばいいのか。受け皿は増えています。
リクルートマネジメントソリューションズの昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査(2024年、企業207社)では、複線型人事制度の導入率が2016年の30.4%から2024年には58.0%へ上昇しました。管理職コースと専門職コースを分け、専門性で等級を上げられる仕組みを持つ企業が、8年でほぼ倍になっています。
1. 専門職コースがあるかを人事に確認する
名称は会社によって異なります。専門職、エキスパート職、スペシャリスト職、プロフェッショナル職。「管理職以外で等級と給与が上がる仕組みがあるか」という聞き方をすると、制度の有無がはっきりします。
確認したいのは3点です。
- どの等級まで上がれるのか
- 管理職と比べて処遇の上限に差があるのか
- コース間の移動は可能か
上限に大きな差があるなら、それは実質的に管理職コースしかないのと同じです。
2. 金額の差を把握しておく
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、所定内給与額(男女計)は部長級635.8千円、課長級529.2千円、係長級399.2千円、非役職者310.5千円でした。課長級と非役職者の差は月218.7千円です。
専門職コースがこの差をどこまで埋められるのかは、制度の設計によります。人事に確認する際は、コースごとの等級と給与レンジを具体的に聞いてください。
あわせて読みたい管理職になってもメリットはない?メリットを感じない理由や本当にメリットがないのか確かめる方法残業代を差し引いた損得の計算手順はこちら。3. 役職以外の影響力を積む
制度がない場合でも、方向はあります。プロジェクト単位のリーダー、特定領域の社内第一人者、後進の育成担当、社外発信の窓口。いずれも決裁権は伴いませんが、評価の材料にはなります。
役職の有無と、社内での影響力の大きさは一致しません。管理職になることだけが、社内で存在感を持つ道ではないということです。
管理職をやりたくない気持ちが変わらないときの選択肢
制度を確認しても、交渉しても、状況が動かないことはあります。その場合の選択肢は3つです。
辞退する
ひとつは、打診の段階なら辞退することです。役職への任命は使用者の人事権の行使に当たるため無条件ではありません。弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所の解説「従業員が管理職への昇進を拒否したら?」では、就業規則に昇進の定めがあり採用時に管理職への昇進が前提とされている総合職などの場合、企業は業務上の必要性に基づいて昇進を命じることができるとされています。それでも、一度の辞退で解雇に至るケースはまれです。伝え方の手順は別記事にまとめています。
あわせて読みたい管理職は断れる?断るメリット・デメリットと伝え方の手順打診を断るときの伝え方と手順はこちら。業務領域を交渉する
ふたつめは、役割の一部だけを外す交渉です。評価面談の設計を人事と分担する、採用面接を他のメンバーと分ける、プレイング比率を明示する。免除の依頼ではなく配分の見直しとして持ちかけると、検討の対象になりやすくなります。
環境を変える
みっつめは、環境を変えることです。同じ課長職でも、決裁権の範囲もプレイング比率も会社によって差があります。専門職の等級上限が管理職と変わらない会社も実在するはずです。30・40代管理職・専門職のグローバルキャリアを拓く転職エージェント【Samurai Job】
のように管理職・専門職層を扱うエージェントに現状を伝えると、他社の制度設計が具体的に分かります。動くかどうかは後で決めれば十分です。
まとめ
管理職をやりたくない人は、一般社員の66.9%でした。国際比較では日本の管理職志向は19.8%で、18か国・地域中の最下位です。多数派であり、例外ではありません。
責任感の問題でもありません。管理職の継続意向は、組織の支援を感じている層で65.2%、感じていない層で41.6%。孤独感の高低でも70.2%と40.6%の差がありました。意欲は環境で20ポイント以上動きます。
目指す先については、複線型人事制度の導入率が58.0%まで上がっています。専門職コースの有無、等級の上限、給与レンジ。この3点を人事に確認するところから始めてください。
今日できるのは、社内の人事制度の資料を開いて「管理職以外のコース」の記載を探すことです。あるかないかが分かるだけで、次に考えるべきことが変わります。
出典
- リクルートマネジメントソリューションズ「管理職のあり方に関する実態調査」(2026年2月24日発表/管理職188名・一般社員166名)
- リクルートマネジメントソリューションズ「昇進・昇格制度の現状:管理職志向の変化と対応策【前編】」(昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査2024/企業207社)
- パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」
- パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」
- 厚生労働省労働基準局「管理監督者の労働時間データについて」
- マイナビキャリアリサーチLab「“つながらない権利”をめぐる個人の本音と企業の実態調査」
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(役職別にみた賃金)」
- 弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所「従業員が管理職への昇進を拒否したら?」
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」

