「監督署が入るかもしれない」と聞いたとき、まず書類をそろえる側に回るのは、たいてい現場の管理職です。厚生労働省が9月15日に公表した最新の監督指導結果にも、その風景が数字で表れていました。ただ、そこで確かめておきたいのは部下の勤怠だけではありません。あなた自身の労働時間は、いま誰が数えているでしょうか。
ニュースの概要
厚生労働省は2026年9月15日、長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の監督指導結果を公表しました。監督指導を実施したのは29,150事業場で、前年度の26,512事業場から増えています。
このうち労働基準関係法令違反があったのは22,882事業場(78.5%)。違法な時間外労働が確認されたのは11,228事業場で、実施事業場に対する割合は38.5%となり、前年度の42.4%から下がりました。一方で、過重労働による健康障害防止措置が未実施だった事業場は5,919事業場(20.3%)、労働時間の把握が不適正として指導を受けた事業場は4,045事業場(13.9%)ありました。
管理職にとってのポイント
- 「違反8割」は、特殊な会社の話ではない。監督の対象は情報提供などをきっかけに選ばれた事業場ですが、それでもこの割合が出るという事実は、長時間労働が個人の頑張りや段取りの問題ではなく、体制の側で起きていることを示しています。自分の段取りが悪いから残業が減らない、と結論を急がなくていい材料です。
- 「労働時間の把握が不適正」13.9%は、記録の話。実態が記録に残っていなければ、業務の配分を変えることも、面接指導につなげることもできません。勤怠を整えるのは事務作業ではなく、人を守るための最初の一歩です。
- 把握の対象には、管理職自身も含まれている。労働安全衛生法上の「労働時間の状況の把握」は、管理監督者も対象です。月80時間を超える時間外・休日労働があり疲労の蓄積を感じている場合には、自ら申し出て医師の面接指導を受けられる仕組みも用意されています。
えんのした編集部の視点
違法な時間外労働の割合が42.4%から38.5%に下がったことは、素直に良い知らせだと受け止めています。ただ、監督対象が増えたなかで違反の実数はほぼ横ばいで、健康障害防止措置の未実施は2割前後のまま動いていません。制度は整ってきたけれど現場の運用が追いつかない——人がいちばん消耗する段階に、まだいるように見えます。
そして、その運用を任されている当の管理職が、自分の時間数を数えられていないことは珍しくありません。部下の勤怠は毎月チェックしているのに、自分の先月の残業が何時間だったかは答えられない。もしそうなっているなら、それはあなたの自己管理の甘さではなく、会社が把握すべきことを把握できていないという課題です。
まずは、自分の労働時間がどんな方法で記録されているのかを一度確認してみてください。記録が残っていれば、それは誰かに相談するときの材料になります。数えてもらえていないなら、自分の分も数える。それはわがままではなく、制度がもともと想定している使い方です。

