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「じゃあ、進捗どう?」
1on1をこの一言で始めているなら、その時間は定例会議と同じ役割しか果たしていません。
1on1で話すのは、次の3つです。
- 業務の詰まり
- 心身のコンディション
- 中長期のキャリア
どれも、他のメンバーがいる場では出てきにくい話です。この3つを拾うために、一対一の時間を取ります。
1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングの目的は、部下のための時間をつくることです。具体的には、3つのポイントに分けられます。
まず前提として、1on1は進捗確認の場ではありません。進捗の確認が必要なら、チーム会議か日報で足ります。わざわざ一対一で30分を取る理由は、そこでしか出てこない話があるからです。
進捗確認の場になっている1on1は、部下から見れば個室で報告をさせられているだけです。「何か困っていることは?」と最後に一度聞かれても、報告の姿勢から本音には切り替わりません。
1. 部下の成長を支える
1on1は、部下が自分の仕事を振り返り、次に何を伸ばすかを考える時間です。上司の役割は答えを渡すことではなく、考えるための問いを投げることにあります。
日々の業務では、目の前の案件をこなすことが優先されます。どこでつまずいたのか、次はどうするのか、を立ち止まって考える機会は意外とありません。その成長の機会を定期的に作り支援するのが、1on1の一つめの役割です。
2. 日常では見えない変化に早く気づく
退職の意思を聞いたのが引き止められない段階だった。
体調の変化に気づいたのが休職の直前だった。
こうした事態は、日常の接点が少ないほど起こりやすくなります。
厚生労働省の労働者の心の健康の保持増進のための指針は、管理監督者が部下の状況を日常的に把握し、変化に気づく「ラインによるケア」を、メンタルヘルスケアの柱の一つに位置づけています。1on1は、こうした気づきの機会として機能します。
3. 話せる関係をつくる
困ったときに「ちょっといいですか」と言える関係は、一度の面談ではなかなかできません。短い時間でも定期的に向き合うことで、少しずつ積み上がっていきます。
関係ができていれば、問題は小さいうちに上がってきます。1on1の効果は、1回ごとの中身より、続けたことで生まれる相談のしやすさに表れます。
マネージャーが1on1で扱う3つのテーマ
扱うテーマは、大きく3つに分けられます。毎回すべてを話す必要はありません。部下がその日に話したいものを選べるよう、引き出しとして持っておきます。
業務(パフォーマンス・課題)
業務のテーマで扱うのは、進捗そのものではなく、進んでいない部分とその理由です。
いま詰まっていることと、その原因
「何が止まっている?」ではなく「何があれば前に進む?」と聞くと、必要な情報や支援が具体的に出てきます。
ここで気をつけたいのは、その場で解決しようとしないことです。聞いた瞬間にアドバイスを始めると、部下は相談をやめてしまいます。解決策を出す前に、状況を全部話してもらうことを意識しましょう。
成果の振り返りと、次の目標のすり合わせ
うまくいった仕事も、振り返りの対象です。何が効いたのかを本人の言葉で説明してもらうと、再現できる強みになります。
そのうえで、次の期間に何を目指すかを確認しましょう。上司が考える優先順位と、部下が考える優先順位がずれていることは珍しくありません。ずれに早く気づけるのも、1on1の利点です。
<例文>
「この2週間で、いちばん時間を使ったのは何でしたか」
「進めにくくなっていることがあれば、一つだけ教えてください」
「私が動いたほうが早くなることはありますか」
コンディション(心身の健康・関係性)
コンディションのテーマでは、働き方の負荷と、チームの中での関係性を確認します。
労働時間と負荷の偏り
確認したいのは、次のような点です。
- 残業が続いていないか
- 休めているか
- 特定の人に仕事が偏っていないか
本人は「大丈夫です」と答えがちなので、勤怠の数字と合わせて見ると、話を切り出しやすくなります。
不調が疑われても、診断をするのはマネージャーの仕事ではありません。気づいたら、産業医や社内の相談窓口につなぐ。ここが役割の境界線です。
チーム内の人間関係
仕事が進まない理由が、実は人間関係にあることは少なくありません。特定のメンバーとのやり取りが負担になっていないか、話しにくい相手がいないかを確認します。
名前を挙げさせるような聞き方は避け、「進めにくい場面はありますか」のように場面から聞くと、答えやすくなります。
あわせて読みたい部下同士のトラブルに管理職がすべきことは?対処法と予防策部下同士がぶつかったときの対処手順はこちら。<例文>
「最近、休めていますか。休日に仕事のことを考える時間は増えていませんか」
「業務量で、偏っていると感じるところはありますか」
「チームの中で、進めにくい場面や話しにくい相手はいますか」
成長・キャリア(中長期の展望)
成長・キャリアのテーマは、詰まっているときには出てきません。落ち着いている回に少しずつ聞いておくと、配置や任せ方を考える材料になります。
半年後・1年後にできるようになりたいこと
大きなキャリアの話から入ると、身構えてしまう人もいます。「半年後にどんな仕事を任されていたいか」くらいの近さから始めると、具体的な答えが返ってきやすいでしょう。
返ってきた希望は、次の配置やアサインで一つでも反映させてください。大事なのは、ヒアリングをもとに何らかアクションを起こすことです。聞くだけ聞いて何も変わらなければ、部下からの信頼低下につながります。
社内で選べる道の共有
部下が今の仕事に悩んでいるときは、本人が何を変えたいのかを1on1で確認しましょう。
「業務量を調整したい」「別の仕事に挑戦したい」「今後のキャリアを考えたい」では、必要な対応が異なります。
希望が見えてきたら、担当業務の見直しや社内公募、異動など、社内で取り得る選択肢を一緒に整理します。制度の利用条件や異動の可能性は、その場で約束せず、人事などに確認してから伝えましょう。
1on1の終わりには、「誰が、いつまでに、何を確認するか」を決め、次回の面談で進捗を共有します。話を聞くだけで終わらせず、小さくても次の行動につなげることが大切です。
<例文>
「半年後に、任せてほしい仕事はありますか」
「いまの仕事で、もっと増やしたい部分と減らしたい部分はどこですか」
「1年後にどんな働き方をしていたいか、ざっくりでいいので聞かせてください」
1on1の際にマネージャーが注意すべき点
注意したいのは、部下が本音を話さなくなる3つの行動です。1on1の場で一度起きると、信頼を取り戻すには時間がかかるものです。下記の3つの点に注意しながら面談を進めましょう。
1. 評価や査定の話と混ぜない
1on1が評価の材料を集める場だと思われると、部下は自分に不利になる情報を出さなくなります。「この話は評価に響くかもしれない」と感じた時点で、話の中身は当たり障りのないものに変わります。
「この話、査定のときに考慮しておくね」のような一言は、善意でも避けてください。評価面談は別の場として設け、1on1では評価の話をしないと最初に伝えておくと、話しやすさが変わります。
2. プライベートに踏み込みすぎない
コンディションを聞くことと、私生活を詮索することは別です。家族の事情、健康状態の詳細、将来の結婚や出産の予定などを、上司の側から聞き出すのは避けてください。本人が話したい範囲で聞くのが原則です。
聞いた内容を、本人の了承なく他のメンバーや上層部に伝えるのも避けます。健康面の話を安全上の理由で産業医や人事につなぐ必要があるときは、そのことを本人に伝えてから動いてください。黙って共有されたと分かれば、部下からの信頼は大きく低下し、今後本音で話すこともなくなってしまうでしょう。
3. 上司が話しすぎない・テーマを決めすぎない
沈黙を埋めようとして自分が8割話してしまう、という失敗はよく起きます。1on1は部下のための時間なので、話す量の目安は部下が7割以上であるべきです。
テーマの決め方にも差が出ます。パーソル総合研究所の部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査(2025年2月発表)では、効果に関するスコアは、テーマを部下が決めた場合が6.9点、上司が決めた場合が6.4点でした。前日までに「話したいことを一言ください」と頼んでおくだけで、場の主導権は部下に移ります。
マネージャーの1on1がうまくいかないときに見直すこと
形は整えたのに会話が進まないなら、見るべき点は3つです。
一つ目、評価との距離です。先述したように、1on1が評価の材料を集める場だと思われていると、部下は不利になる情報を出しません。評価面談と1on1は別の場だと明言しておくと、話の中身が変わってくるでしょう。
二つ目は、期間です。1on1は数回で効果が出るものではありません。関係が変わるまでに半年程度はかかると考えておいてください。3回で手応えがないからやめる、が最ももったいない判断です。
三つ目は、自分の状態です。余裕がないまま人の話を聞くと、早く終わらせようとする空気が伝わります。1on1が続く日の前後に自分の作業を詰め込みすぎていないか、予定を見直してみてください。
もし自分自身の負荷が積み上がっていると感じるなら、整理先を別に持つ方法もあります。国内最大級のオンラインカウンセリングサービス【Kimochi】
のようなオンラインのカウンセリングは、結論を出す場ではなく話を外に出す場として使えます。自身の心の状態は、部下にも影響します。うまくいかないときは、自分自身の状態の良し悪しも一度確認してみましょう。とくにマネージャーは仕事の悩みを吐き出す場がなく一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。第三者に気持ちを吐き出すことで、頭の中を整理できる可能性もあります。
まとめ
1on1ミーティングの目的は、次の3つです。
- 部下の成長を支える
- 日常では見えない変化に早く気づく
- 話せる関係をつくる
目的がすべて部下の側にあるので、1on1は進捗確認の場ではありません。扱うテーマは、次の3つです。
- 業務(パフォーマンス・課題)
- コンディション(心身の健康・関係性)
- 成長・キャリア(中長期の展望)
毎回すべてを話す必要はありません。次の1on1で試すことを1つだけ選ぶなら、前日に「話したいことを一言ください」と頼んでみてください。それだけで、1on1は部下のための時間に変わるかもしれません。

