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「もう無理かもしれない」
「明日、会社に行ける気がしない」
管理職として走り続けてきた人が、ある日そう思う。それは珍しいことではありません。ただ、その言葉が出てきたときに何をすべきかは、状況によってまったく違います。
「管理職はもう無理」と思う際には、少なくとも3つの段階があります。
- 今すぐ止まる必要がある状態
- 仕事の設計を変えれば戻れる状態
- 環境そのものを変える判断が要る状態
この見極めを飛ばして対処法を探すと、効かない打ち手に時間を使うことになります。
この記事では、まず自分がどの段階にいるかを切り分け、そのうえで段階ごとにやることを整理しました。どれかを勧める内容ではありません。順番を間違えないための地図です。今自分が辛くてどうすれば良いか迷った時の一つの道しるべとして参考にしてみてください。
まず切り分ける:管理職の「もう無理」はどの段階か
同じ「無理」という言葉でも、必要な対応は変わります。次の3つのうち、どれに近いかを考えてみてください。
1.心身が持たなくなっている
- 眠れない日が続いている
- 食事が喉を通らない
- 朝、起き上がるのに時間がかかる
- 休日に何もできない
- 以前は普通にできていたことが、できなくなっている
この段階にあるなら、仕事の進め方を工夫する話は後回しです。まず体を休めることが最優先になります。頑張り方を変えても、体力が戻らなければ同じ場所に戻ってしまいます。
あわせて読みたい管理職がつらいのは量のせいではない?4つに分けて考える方法つらさの正体を4つに分けて整理しています。2.仕事の量と責任が処理できる範囲を超えている
- 体調に大きな変化はないが、業務が明らかに多い
- 判断待ちが積み上がり、常に何かに追われている
- プレイヤー業務とマネジメント業務の両方を抱えている
この段階では、働き方の設計を変えることで状況が動く可能性があります。リクルートマネジメントソリューションズの実施した調査でも、管理職を続けたくない最大の理由として業務負荷が挙げられました。感じ方の問題ではなく、構造の問題として扱えます。
あわせて読みたいマネージャーが激務になる理由|上限規制の外側と、時間を減らす手順労働時間の上限と、時間を減らす手順はこちら。3.この会社・この役割との組み合わせが合っていない
- 量の問題は解消できそうなのに、それでも戻る気がしない
- 仕事の内容や会社の方針に納得できていない
- ここで何年も続ける自分が想像できない
この段階なら、量を減らす工夫より、役割や環境を変える検討のほうが本質に近づくかもしれません。
【状況別】「管理職はもう無理」と感じた時の対処法
1.「心身が持たなくなっている」場合はまず休むことを優先する
「休めない理由」より先に、休む手段を確認する
有給休暇、時間単位年休、傷病手当金、休職制度など、会社によって使えるものは違いますが、選択肢は思っているより残っていることが多いです。
まずは就業規則を開いて、休暇と休職に関する条文を読んでみてください。制度の有無を知らないまま「休めない」と判断している場合があります。
産業医・医療機関に相談する
眠れない、食べられない状態が2週間以上続いているなら、自己判断で様子を見る段階ではありません。産業医のいる会社なら面談を申し込めますし、いない場合は医療機関に相談できます。
※この記事は医学的な判断を示すものではありません。状態の評価は専門家に任せてください。
公的な相談窓口を使う
厚生労働省が運営する「こころの耳」は、働く人のメンタルヘルスに関するポータルサイトです。電話・SNS・メールでの相談窓口があり、無料で利用できます。
社内の人に話す前に、まず外で言葉にしてみるなど、それだけで状況の見え方が変わることもあります。
周囲への伝え方は、詳細を語らなくてよい
休む連絡をするとき、理由をどこまで説明すべきか悩む方がいます。結論から言えば、詳細を伝える義務はありません。
「体調不良のため、しばらく休みをいただきます」で十分です。説明を組み立てる作業自体が負担になるなら、なおさら短くしてかまいません。引き継ぎも、完璧である必要はないと考えてください。
段階2のとき:仕事の設計を変える
何が多いのかを分解する
「忙しい」のままでは手が打てません。時間の使い方を一週間だけ記録して、次の4つに分けてみてください。
- 自分にしかできない判断
- 自分がやらなくてもよい実務
- 会議や報告に使っている時間
- 他人の作業待ちで止まっている時間
この作業をすると、多くの場合2つ目と3つ目が想像以上に膨らんでいます。削る対象はそこにあります。
上司に相談するときは「数字」と「案」を持っていく
「大変です」では動きません。「週にこれだけ時間を使っていて、このうちここを外せば回ります」まで作って持ち込むほうが、話は早く進みます。
このとき、判断を仰ぐのではなく提案の形にするのがコツです。管理職からの相談は、上司にとっても対応コストのかかるもの。案があるほど乗ってもらいやすくなります。
削る対象として最初に見てほしいのが会議です。出席しているだけで発言していない会議、報告のためだけの会議、議事録を読めば足りる会議。この3つを外すだけで、週に数時間が戻ってくることも珍しくありません。
「自分が出ないと決まらない」と感じる会議についても、代理出席や事後確認で回るかどうかを一度試してみる価値はあります。試してみて回らなければ戻せばいいだけの話です。
部下に渡す範囲を決める
任せられないのではなく、任せる基準を決めていないから渡せない、というケースがよくあります。
「失敗しても取り返せるもの」から渡してみてください。金額や影響範囲で線を引くと、渡す側の不安も減ります。
段階3のとき:役割と環境を見直す
降りるという選択肢を検討対象に入れる
管理職を降りる、専門職に移る、部署を変える。会社によっては制度として用意されています。
この選択が評価にどう影響するかは会社によりますが、体調を崩して長期離脱するよりは、影響が小さいことも多いです。まず人事に制度の有無を確認してみてください。
外の条件を知ってから決める
いまの環境が特別なのか、どこでも同じなのか。それは社内にいるだけでは判断できません。
転職エージェントに現状を話すと、他社の管理職ポジションがどういう条件で募集されているかが分かります。すぐに動くつもりがなくても、判断材料として使えます。
一人で抱え込まず、話す相手をつくる
管理職は、部下にも上司にも弱みを見せにくい立場です。相談相手が社内にいないまま、判断だけを求められる状態が続きます。
社内に話せる相手がいない場合、社外のカウンセリングを使う方法もあります。国内最大級のオンラインカウンセリングサービス【Kimochi】
のように、オンラインで相談できるサービスも増えています。もちろん、産業医や公的な窓口といった無料の選択肢を先に検討してかまいません。
管理職がもう無理と思った際にやらないほうがいいこと
限界に近いときほど、次の行動は避けたほうが安全です。
- その場の勢いで退職を決める
- 誰にも言わないまま消耗を続ける
- 「甘え」だと自分に言い聞かせて基準を上げる
- 情報収集だけを延々と続ける
いずれも、判断力が落ちている状態で大きな決断をすることにつながります。まず状態を戻し、それから決める。この順番を守るだけで、後悔の量は変わります。
最後の項目は見落とされがちです。対処法を調べ続けているうちは動いている気になれますが、状況は変わりません。この記事を読み終えたら、どれか一つでいいので実際の行動に移してみてください。就業規則を開く、産業医面談を申し込む、一週間の時間を記録する。小さくてかまいません。
まとめ
「もう無理」と感じたとき、最初にやることは対処法を探すことではありません。自分がどの段階にいるかを見極めることです。
心身が持たないなら止まる。量が多すぎるなら設計を変える。合っていないなら環境を見直す。段階が違えば、効く打ち手も変わります。
そして、どの段階であっても共通して効くのは、一度誰かに話すことです。産業医、人事、公的な相談窓口、社外の専門家。どれでもかまいません。頭の中だけで考え続けるより、外に出したほうが次の一手は見つかりやすくなります。

