9月に入って、職場の掲示板に見慣れたポスターが貼られていないでしょうか。10月1日から7日までの「全国労働衛生週間」に向けて、9月1日から30日は準備期間と位置づけられています。毎年のことなので流してしまいがちな行事ですが、今年のスローガンと重点事項は、疲れている管理職にとって、少しだけ都合のいい「口実」になります。
ニュースの概要
全国労働衛生週間は、厚生労働省と中央労働災害防止協会が中心となって毎年実施している取り組みで、昭和25年に始まり今年で第77回を迎えます。2026年度の本週間は10月1日〜7日、準備期間は9月1日〜30日です。今年度のスローガンは「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」。実施要綱では、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、高年齢労働者が安心して働ける職場環境づくり、女性の健康課題への対応などが重点として挙げられています。
管理職にとってのポイント
この週間の実務的な価値は、ポスターでも標語でもなく、「9月は職場の健康について話してよい月です」と国が公式に決めてくれている、という一点にあります。普段は切り出しにくい話題を、行事を理由に持ち出せる期間だと考えると使い道が変わってきます。
- 「準備期間だから」という枕詞は、面談で健康や残業の話を切り出すときの摩擦を減らしてくれる。個人を心配している形にならずに済むので、部下も身構えにくい。
- 重点事項は、部下のケア(ラインケア)だけを求めているわけではない。管理職自身も一人の労働者であり、健康診断も長時間労働対策も等しく対象に含まれる。
- 10月1日は、カスタマーハラスメント対策の義務化が始まる日でもある。10月あたまに現場の負荷が集中しやすいことを見越して、9月のうちに手を打っておきたい。
- 全項目を点検しようとすると、それ自体が新しい負担になる。今年は1つだけ選ぶ、で十分に成立する。
えんのした編集部の視点
こうした啓発期間が来るたびに、管理職には「気づく側」の役割が積み増されていきます。部下の様子を見て、声をかけて、必要なら産業医につなぐ。大切な仕事ではありますが、その構造だと、健康な職場をつくろうとしている本人の不調だけが、誰にも気づかれないまま残ります。
スローガンの「ひとりひとり」には、当然ながら管理職も入っています。今年の準備期間は、部下の点検票を配る前に、自分のここ1か月の残業時間と睡眠時間をカレンダーで眺めてみるところから始めてみてはどうでしょうか。数字を見て思うところがあれば、社内の産業医や保健師、あるいは各都道府県の産業保健総合支援センター(無料で相談できます)といった窓口があります。管理職が窓口を使うのは、弱さの表明ではなく、単なる制度の利用です。
10月1日までに職場を完璧にする必要はありません。ただ、「自分も対象に入っている」と言葉の上で確認しておくだけでも、抱え込みの角度は少し変わります。

