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部下の相談を受け、上からの数字を求められ、自分の実務も残っている。管理職のストレスは、ひとつの原因ではなく複数が同時にかかることで重くなります。
ただ、「忙しいから仕方ない」で止めてしまうと、打てる手が見えません。原因を分解すれば、自分で変えられる部分と、会社の制度を使う部分と、環境を変えるしかない部分に分かれます。
この記事では、公的な統計で管理職のストレスの正体を確認したうえで、原因別の対策を整理しました。読み終えたときに、明日から動かせるものが1つ以上残るように書いています。
管理職のストレスは、統計でどこまで裏づけられているか
まず、感覚ではなく数字から入ります。
厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査(実態調査)によると、現在の仕事や職業生活に関することで強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は68.3%でした。内訳の上位は、仕事の量が43.2%、仕事の失敗・責任の発生等が36.2%、仕事の質が26.4%、対人関係が26.1%と続きます。
上位4つのうち3つが、管理職の職務そのものと重なります。量を引き受け、失敗の責任を負い、人と人の間に立つ。これは管理職の定義に近い内容です。
労働時間の面でも差があります。厚生労働省が労働政策審議会に提出した管理監督者の労働時間データでは、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった人の割合は、管理的職業従事者が4.1%、全職種平均が1.5%でした。約2.7倍の開きです。
さらに、厚生労働省の令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災請求件数が4,958件、支給決定件数が1,082件となっています。出来事別ではパワーハラスメントが222件で最多、次いで顧客からの迷惑行為とセクシュアルハラスメントが各127件、仕事内容・仕事量の大きな変化が113件でした。
管理職のストレスは、個人の弱さの問題ではなく、統計に現れる構造の問題です。ここを押さえてから対策に入ってください。
管理職のストレスの原因は、大きく5つに分けられる
対策を選ぶには、自分がどれに当たるかの特定が先です。上の統計と実務を突き合わせると、原因は5つに整理できます。
1. 仕事の量が物理的に多い
最も件数が多い原因です。労働安全衛生調査でも43.2%と首位でした。
管理職の場合、これはプレイング業務とマネジメント業務の二重化として現れます。パーソル総合研究所の中間管理職の就業負担に関する定量調査(2019年3月、中間管理職2,000人)では、働き方改革が進んでいる企業群で中間管理職自身の業務量が増えたとする回答が62.1%、組織全体の業務量増加が69.0%でした。部下の労働時間を減らした分が、管理職に寄っている構図です。
2. 失敗と責任が自分に集まる
36.2%が挙げた項目です。担当者のときは自分の作業範囲だけでしたが、管理職になると部下の成果物にも責任が及びます。
厄介なのは、責任の範囲が決裁権の範囲より広くなりやすいことです。人員も予算も動かせないのに結果だけを問われる状態は、裁量のない負荷として蓄積します。
3. 上と下の板挟みになる
対人関係は26.1%でした。管理職の場合、相手が一方向ではありません。経営からの要求と現場の実情が食い違うとき、その差を吸収する役が回ってきます。
あわせて読みたい管理職で人間関係が苦しい…つらくなる理由と状況から抜け出す対策上・下・横の人間関係の整え方はこちら。4. 勤務時間外に切れない
マイナビの「つながらない権利」をめぐる個人の本音と企業の実態調査(2025年12月、正社員1,446名)では、勤務時間外に業務連絡がくることがある人の割合は全体で70.0%、役職別では部長職90.3%、課長職89.8%、非管理職は55.5%でした。
管理職はほぼ全員が対象という水準です。休みが休みとして機能しなくなると、回復の時間そのものが失われます。
あわせて読みたい管理職が土日も仕事は普通?法律・手当・振替休日と断り方土日も仕事が入る場合の法律上の扱いと断り方はこちら。5. 相談する相手がいない
同じ令和6年労働安全衛生調査では、ストレスを相談できる人がいる労働者は94.6%、実際に相談したことがある人は74.7%でした。数字の上では相談先はあることになります。
ただ、管理職の場合は部下に弱音を見せにくく、上司には評価者という壁があります。相談先が「いる」ことと「使える」ことは別です。
管理職のストレス対策① まず原因を可視化する
打ち手の前に、現在地を数値で押さえてください。感覚で「きつい」と言っている限り、会社も動きません。
使えるのはストレスチェックです。令和6年労働安全衛生調査によれば、労働者50人以上の事業所でのストレスチェック実施率は89.8%でした。管理職も当然、受検の対象になります。
結果が高ストレスと判定された場合、本人の申出によって医師による面接指導を受けられます。この面接指導の結果を踏まえて、事業者は就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮といった措置を検討する義務を負います。「制度としての記録」が残る点が、口頭の相談との決定的な違いです。
なお、ストレスチェックは現在、労働者50人未満の事業場では努力義務にとどまっています。2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、全事業場での実施が義務となることが決まりました。厚生労働省の小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)によれば、施行日は令和10年(2028年)4月1日です。小規模な事業場に所属している場合は、実施時期を人事に確認しておくとよいでしょう。
社内の仕組みを使いにくいと感じる場合は、外部に出す方法もあります。継続的に状況を整理したいなら、国内最大級のオンラインカウンセリングサービス【Kimochi】
のようなオンラインのカウンセリングも選択肢です。厚生労働省のこころの耳には無料の電話・SNS相談窓口がまとまっているので、まずそちらから試して、必要に応じて有料のサービスを検討する順番で構いません。
管理職のストレス対策② 仕事の量と時間を削る
原因の1位が量である以上、量に手をつけないと数字は動きません。管理職が自分の権限の範囲で実行できる手を、効果の大きい順に挙げます。
ひとつめは、勤務時間外の連絡ルールを自分のチームで先に決めることです。前述のマイナビ「つながらない権利」調査では、勤務時間外の業務連絡を拒否したいと答えた人が64.3%いた一方、企業側は41.8%がガイドライン策定に未着手でした。会社の制度を待つ必要はありません。「緊急の定義」と「緊急でない場合の連絡手段」をチーム内で合意するだけで、着信のたびに緊張する状態は減らせます。
ふたつめは、自分の年次有給休暇を先に押さえることです。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、年次有給休暇の平均付与日数18.1日に対し、平均取得日数は12.1日、取得率は66.9%でした。管理監督者にも年次有給休暇は一般労働者と同様に付与されます。取得率が3分の2にとどまっている以上、残りの3分の1は制度上は取れるのに取っていない時間ということになります。
みっつめは、プレイング業務の棚卸しです。自分が担当している実務を一覧にし、「自分でなければできないもの」と「自分がやったほうが早いだけのもの」に分けてください。後者は移管の対象になります。この一覧は、人員増を要求する際の資料としても使えるはずです。
あわせて読みたい管理職はなぜ大変?原因と対策|量ではなく領域の数で考える業務をまとめる・減らす・渡す手順はこちら。管理職のストレス対策③ 支援と相談先を確保する
量を減らす交渉には時間がかかります。並行して、支援の側を厚くしてください。
厚生労働省の労働者の心の健康の保持増進のための指針は、メンタルヘルスケアを4つに分類しています。セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4つです。
見落とされやすいのが、管理職自身も「ラインによるケア」を受ける側であるという点です。同指針では、管理監督者もその上位の管理監督者によるケアの対象とされています。自分の上司に状況を伝えることは、役割の放棄ではなく制度が想定している行動です。
社内で使える資源も確認しておいてください。産業医、保健師、衛生管理者、外部EAPのいずれかを置いている会社は珍しくありません。令和6年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は労働者50人以上で94.3%でした。
社外の公的な窓口としては、各都道府県の労働局が設置する総合労働相談コーナーが無料で相談を受け付けています。労働時間や割増賃金の扱いに疑問がある場合は、こちらが適しています。
管理職のストレスが環境側にあるときの選択肢
ここまでの対策は、原因が仕事の設計にある場合に効きます。一方で、原因が会社の構造そのものにあるケースもあります。
判断の目安になるのが、待遇と裁量の釣り合いです。厚生労働省の労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のためにでは、管理監督者に当たるかどうかの判断要素として、経営者と一体的な立場にある重要な職務内容と責任・権限、労働時間に対する裁量、そして一般労働者と比べて相応の待遇の3点が挙げられています。裁量も待遇も伴わないまま責任だけを負っている状態は、そもそも管理監督者の要件を満たしていない可能性があります。
待遇の水準を測る材料もあります。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、所定内給与額(男女計)は課長級529.2千円、係長級399.2千円、非役職者310.5千円でした。自分の金額がこの水準から大きく離れているなら、会社固有の問題と考えられます。
同じ管理職でも、決裁権の範囲もプレイング比率も会社によってかなり違うものです。30・40代管理職・専門職のグローバルキャリアを拓く転職エージェント【Samurai Job】
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まとめ
管理職のストレスは、量・責任・板挟み・時間外の連絡・相談先の不在という5つに分けられます。強いストレスを感じる労働者は68.3%、そのうち量が43.2%、責任が36.2%を占めていました。
対策の順番は、原因の可視化、量の削減、支援の確保です。ストレスチェックで記録を残し、勤務時間外の連絡ルールを自分のチームで決め、年次有給休暇の未消化分を押さえる。ここまでは自分の権限で始められます。
それでも変わらない場合、原因は仕事の設計ではなく会社の構造にあるかもしれません。裁量と待遇が責任に見合っているかを、統計の数字と照らして確認してみてください。
今日やることを1つだけ決めるなら、直近のストレスチェックの結果を開くところからで十分です。
出典
- 厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」
- 厚生労働省労働基準局「管理監督者の労働時間データについて」
- 厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』を公表します」
- パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」
- マイナビキャリアリサーチLab「“つながらない権利”をめぐる個人の本音と企業の実態調査」
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概要」
- 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(役職別にみた賃金)」
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

