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会議が終われば自分の実務が残っていて、部下の相談は隙間に入ってくる。気づけば終電で、土日にも手をつけている。
マネージャーの激務は、本人の段取りが悪いから起きているわけではありません。制度の上で、時間の歯止めが外れる立場だからです。歯止めがない以上、頑張って処理速度を上げても、空いた分だけ仕事が入ります。
マネージャーが激務になるのは、時間の上限が外れるから
管理監督者には、時間外労働の上限規制が適用されません。ここが起点です。
一般の労働者の場合、厚生労働省の時間外労働の上限規制 わかりやすい解説によれば、原則は月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって特別条項を結んだ場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満、2〜6か月平均で月80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回まで、という上限がかかります。
ところが、この上限規制は管理監督者には適用されません。同じ資料でも、管理監督者は適用除外として明記されています。労働基準法41条2号により、労働時間・休憩・休日に関する規定そのものが適用されないためです。
部下の残業を原則の枠に収める管理をしている本人には、その枠がない。仕事が青天井になりやすい理由は、能力でも段取りでもなく、ここにあります。
ただし、適用除外は「何時間働かせてもよい」という意味ではありません。同じ資料でも、適用除外の対象者について健康・福祉を確保するよう努めることが指針で定められています。
2026年9月から、労働基準監督署の指導の仕方が変更
上限規制そのものは動いていませんが、その運用は変わりました。厚生労働省が2026年8月19日に発表した時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直しますにより、同年9月1日から労働基準監督署の指導方針が変更されています。
変わったのは次の2点です。
- 時間数だけを見た一律指導をやめる:これまでは時間外・休日労働の時間数に着目し、1か月45時間以内への削減を一律に求めていました。
- 36協定の健康確保措置を重点的に確認する:面接指導、勤務間インターバル、深夜業の回数制限、代償休日といった措置が実際に機能しているかを見る形になります。
法律の上限が緩くなったわけではありません。 月45時間・年360時間という枠も、特別条項の上限も、これまでどおりです。「45時間さえ守れば大丈夫」という物差しが使えなくなった、と捉えるほうが実態に近いといえます。
なお、「月60時間」という数字を上限規制と混同しないよう注意してください。こちらは時間外労働が月60時間を超えた分の割増賃金率が50%になるという別の制度で、上限の話ではありません。
あわせて読みたい残業「月45時間」の一律指導が9月見直しへ|管理職が知っておきたい3つの変化この見直しの中身を、管理職の立場から3点にまとめています。マネージャーの激務は、数字でどのくらいか
長時間労働が起きる割合は、管理職とそれ以外で明確に差があります。
厚生労働省が労働政策審議会に提出した管理監督者の労働時間データでは、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった人の割合は、管理的職業従事者が4.1%、全職種平均が1.5%でした。約2.7倍の開きです。
職場の側から見た数字もあります。厚生労働省の長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果(令和7年7月30日公表)では、監督指導を実施した26,512事業場のうち、労働基準関係法令違反があったのは21,495事業場で81.1%。違法な時間外労働があったのは11,230事業場(42.4%)で、そのうち月80時間を超える時間外・休日労働が認められたのは5,464事業場(48.7%)でした。
さらに、過重労働による健康障害防止措置が未実施だった事業場は5,691(21.5%)あります。長時間労働が起きている職場では、対策のほうも動いていないことが多い、ということです。
自分の状況がこの中のどこにあるのかは、数えてみないと分かりません。
あわせて読みたい管理職が土日も仕事は普通?法律・手当・振替休日と断り方土日も仕事が入る場合の法律上の扱いと断り方はこちら。マネージャーが激務でも、会社に残っている3つの義務
管理監督者は労働時間の規定から外れますが、会社の義務がすべて消えるわけではありません。押さえておきたいのは3つです。
1. 労働時間の状況を把握する義務
厚生労働省の働き方改革関連法解説(労働安全衛生法関係)では、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、事業者は高度プロフェッショナル制度の対象者を除くすべての労働者(管理監督者を含む)の労働時間の状況を、タイムカード等の客観的な方法で把握する義務を負い、その記録を3年間保存しなければならないとされています。
管理職だから勤怠をつけなくてよい、というのは誤りです。把握されていないこと自体が、是正の対象になります。
2. 医師による面接指導
同じ資料によれば、時間外・休日労働が1か月あたり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者は、本人の申出によって医師の面接指導を受けられます。管理監督者も対象です。
面接指導の結果を踏まえ、事業者は就業場所の変更や労働時間の短縮といった措置を検討する義務を負います。口頭の相談と違い、制度としての記録が残る点が大きな違いです。
3. 深夜割増と年次有給休暇
厚生労働省の労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のためにでは、管理監督者であっても深夜業(22時から翌5時)の割増賃金は支払う必要があり、年次有給休暇も一般労働者と同様に与えるとされています。深夜まで作業した分の割増が出ていないなら、給与明細と勤怠記録を照らしてみてください。
先ほど触れた月60時間超の50%割増は、時間外労働に対するものです。管理監督者には時間外・休日の割増賃金がそもそも発生しないため、この50%も適用されません。管理監督者に残るのは深夜割増だけ、と覚えておいてください。
あわせて読みたい「管理職だから休めない」は本当か?休めない5つの理由と休むための具体策管理職が休めない理由と、休むための具体策はこちら。マネージャーの激務が、健康に関わる水準に近づく目安
どこからが別の話になるのかは、公的な基準で判断できます。自分の感覚で線を引く必要はありません。
厚生労働省の脳・心臓疾患の労災認定基準では、業務と発症の関連性が強いと評価される水準として、発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2か月間から6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が挙げられています。
改正のポイントとして、この時間に至らない場合でも、これに近い時間外労働があるときは、勤務の不規則性や拘束時間の長さといった労働時間以外の負荷要因も合わせて評価されることが明確化されました。時間だけで区切られるわけではない、ということです。
直近3か月の時間外を数えて、この水準に近いと感じたなら、面接指導の申出を検討してください。産業医、保健師、社内の相談窓口のどれかにつなぐところから始められます。
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のようなオンラインのカウンセリングという選択肢もあります。話を聞いてもらうことで、自分の中で整理ができ、解決の糸口が見つかる可能性もあるかもしれません。
マネージャーが激務を抜け出すための4つの手順
マネージャーの仕事が増え続けると、目の前の依頼をさばくだけで一日が終わりがちです。そんなときは、気合いで処理量を増やす前に、仕事の総量と、引き受ける範囲を見直す必要があります。次の順番で進めてみてください。
1. まず1週間、「時間を奪っている仕事」を記録する
すべての業務を細かく計測する必要はありません。1週間だけ、予定表に載っていない仕事も含めて記録します。
- 自分で進める実務
- 会議と、その準備・事後対応
- 部下からの相談や確認
- 急な依頼への対応
それぞれに使った時間と、「予定していた仕事が何によって中断されたか」をメモしてみましょう。たとえば、資料作成が進まない原因が作業量ではなく、日に何度も入る確認対応だと分かれば、対策も変わります。
2. 仕事を「やめる・減らす・任せる・自分が担う」に分ける
記録した仕事を並べ、まず「本当に必要か」を確認します。読まれていない定例資料や、目的が曖昧な会議は、作り方を工夫する前に廃止・縮小できないか検討しましょう。
次に、部下や他部署に任せられる仕事を探します。「自分がやったほうが早い」仕事も候補ですが、いきなり丸ごと渡す必要はありません。たとえば、資料作成なら数字の集計から任せ、自分は判断と最終確認を担う形にできます。
ここで大切なのは、任せる相手の仕事も増えるという点です。移管するなら、その人の既存業務をどう調整するかもセットで考えます。
3. 上司には「何を減らすか」の決定を求める
自分の判断だけでは会議や報告を減らせない場合は、上司に優先順位を決めてもらいます。相談時には、仕事の一覧を見せながら、具体的な選択肢を出しましょう。
「現在、週に約○時間を定例報告と確認対応に使っており、採用計画の作成が後ろ倒しになっています。報告を隔週にするか、集計作業を分担してもらえれば、採用計画に時間を確保できます。どちらを優先すべきでしょうか」
人員を増やせない場合でも、「では何を後回しにするか」は決められます。すべてを従来どおり引き受けたまま、改善だけを追加しないことが重要です。
4. 決めた変更を2週間試し、負担が減ったか確認する
会議を減らす、確認の時間帯を決める、仕事の一部を任せるなど、合意した変更をまず2週間試します。その後、残業時間だけでなく、予定していた重要業務に使えた時間や、移管先に無理が出ていないかも確認してください。
負担が減らなければ、残った仕事を再び上司と見直します。仕事量に対して対応できる人が足りないなら、追加の人手を求めるか、業務の範囲・期限を変えるかを決める段階です。マネージャー一人の工夫で埋め続けるのではなく、組織として優先順位を調整していきましょう。
マネージャーの激務が、会社の構造になっているとき
手順を踏んでも動かないなら、個人の努力の範囲を超えています。判断してよい段階です。
材料になるのが、責任と待遇の釣り合いです。厚生労働省の資料では、管理監督者に当たるかどうかの判断要素として、経営者と一体的な立場にある重要な職務内容と責任・権限、労働時間に対する裁量、一般労働者と比べて相応の待遇の3点が挙げられています。労働時間に裁量がなく、待遇も伴っていないなら、そもそも管理監督者の要件を満たしていない可能性があります。
疑問がある場合は、各都道府県の労働局が設置する総合労働相談コーナーが無料で相談を受け付けています。管理監督者の扱いや割増賃金について確認できる窓口です。
制度の面で争う以外に、環境そのものを変える道もあります。同じ役職名でも、プレイング比率も人員体制も決裁権の範囲も、会社によってかなり違います。業務量が適正に管理されている職場は実在します。
いまの職場で人員も体制も変えられないと分かったなら、転職して環境ごと入れ替えるほうが早いというのが実際のところです。30・40代管理職・専門職のグローバルキャリアを拓く転職エージェント【Samurai Job】
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まとめ
マネージャーが激務になりやすいのは、時間外労働の上限規制が管理監督者には適用されないからです。部下の残業を原則の枠に収めている本人に、その枠はありません。
それでも、労働時間の状況を把握する義務、月80時間超での面接指導、深夜割増と年次有給休暇は会社の側に残っています。管理職だから勤怠をつけなくてよい、というのは誤りです。
健康に関わる水準の目安は、発症前1か月でおおむね100時間、2〜6か月平均で月80時間超。自己判断ではなく、この基準で見てください。
今日できることを1つ選ぶなら、直近3か月の実労働時間を月ごとに書き出すところからで十分です。数字が出れば、次の会話はまったく違うものになります。
出典
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
- 厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」(2026年8月19日発表/2026年9月1日実施)
- 厚生労働省労働基準局「管理監督者の労働時間データについて」
- 厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果」(令和7年7月30日公表)
- 厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働安全衛生法/産業医・産業保健機能の強化関係)」
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
- 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準改正に関する4つのポイント」
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

